2009年12月3日木曜日

Kicho キチョ

さっそく、曲紹介をしようと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=Yb2rlGxVrfY



とはいえ、はじめに持ってくるなんてどんな曲がいいか悩みまして…

リベルタンゴやアディオスノニーノなどの有名な曲にしようかとも思いましたが、それは軌道に乗ったころに書きたいなと思い…
とはいえ、初っぱななので思い入れのある曲…


ということで、自分(チェロ)のソロの曲を選びました。



・曲の背景
曲名「キチョ」とは、コントラバス奏者キチョ・ディアスのことです。
ピアソラともよく共演しており、ピアソラが「最高のベーシスト」と評したほどです。

コントラバスが主役になる曲は3曲あり、
Kicho(キチョ)
Contrabajissimo(コントラバヒシモ)
Contrabajeando(コントラバヘアンド)

その中でもキチョは現代のコントラバス奏者の間では割とレパートリーになっているようです。

ピアソラ的にはZero hourにも収録されたコントラバヒシモが有名ですかね。スアレス・パスにも勧められましたね。



ピアソラ本人の音源はさほど残っておらず、CDではブエノスアイレスの四季で有名な「レジーナ劇場のアストル・ピアソラ」に収録されてます。




・曲の構成
その名の通り、コントラバスが主役となっている曲です。


構成は(Cb=コントラバス、Vn=バイオリン)
Cbソロ①-Cbソロ②-tutti-Vnソロ-Cb,Vnデュオ-tutti-Cbソロ③-tutti

何といっても冒頭のソロです。
バンド全体による長い尾を引くような和音の後に、(演奏にもよりますが)2分近くにわたるソロ①があります。

このソロはアドリブも多くカデンツァ的なのですが、この長いソロの後に8小節さらにソロ②があり、そのあとバンド全体が入ってきます。
ここのtuttiによるメロディはのちにも繰り返されますが、アップテンポで速く、しかもどんどん速くなるような勢いがあります。

そのあとCbのソロが一瞬入るのですがこれが超絶技巧。速いし、臨時記号も多い…
Cbで弾いているのかと耳を疑いたくなるほどうまいですね。
チェロで弾くのも必死です。

その勢いのまま音系は下降して、低音で落ち着いたかと思いきや、バイオリンソロにつながります。


そのあと、Cbのメロディになり、そこにVnが入り掛け合いになります。
ここのメロディが非常に美しい。一番の聴きどころですね。
上の動画ですと3:12あたりからです。


うちのバイオリニストによるとキチョの奥さんが出てくるとか…
まぁ解釈はいろいろありますが、どこか切なく、それでいて決して悲しみに溢れるようなメロディではありません。
どこか上を向いているような感じですね。
CbとVnが励ましあうような…

掛け合いの後、Cbのきっかけで再びtuttiに戻ります。
前回のメロディとほぼ同じですが、今度はその勢いのままCbソロに突き進みます。

奏者にもよりますがこのソロ③はピッチカートによることが多く、どこかジャズ風なノリで進んでいきます。

ソロが最低音に行きつくとバンド全体が入ってきて、勢いのまま最後に向かいます。

最後は重くなって下降音系に行きつき、最終音と思いきや解決せず、一旦音を切って最終音で解決に至ります。
終わり方も特徴的ですね。




・編曲
さてこの曲をピアノトリオに編曲するわけですが、もっとも頭を悩ませたのはチェロの音域です。
曲の構成自体は割と難しくないので、コントラバスの代わりにチェロを中心に据えて、バンドネオンはバイオリンに割り振り、ギターをピアノに割り振る程度ですね。


コントラバスはそもそも譜面が1オクターブ上で書かれており、譜面まま演奏するとチェロだと高く聞こえてしまします。

ですので、可能な限り1オクターブ下で弾いております。
とくに一番の聴きどころ、バイオリンとの掛け合いの部分はずっと1オクターブ下げて弾いているわけですが、最後の最後でオクターブ戻らなければならず、すこーし歯がゆいですね。

しかし、1オクターブ下げて、しかもチェロで弾いても難しいのに、良くコントラバス奏者は弾きますなぁ…
普段目立たない、Kichoという人のすごさに尊敬の念を抱きながら弾かなければならない曲ですね。


冒頭のソロは手に入れた譜面と音源とでだいぶ違ったので、レジーナ劇場やチェロによるKichoの音源CDを参考にしながら、弾きたいように編曲しました。
こういったソロはインストゥルメンタル的と言いますか、音だけを聞かせるといいますか、そういった編曲になりがちなので、ストーリーがあり感情がこもるようなソロを目指して弾いているつもりです。



個人的には冒頭のソロ、途中の超絶技巧、後半のピッチカート…

曲全体も有機的に雰囲気が変化したり、一方でコントラバスがきっかけでガラっと変わったり…

それぞれ良さがあり、盛りだくさんの1曲ですね。


しょっぱなから長くなりましたねー

1 件のコメント:

koguma さんのコメント...

Kichoは、名曲ですよね!

ソロの後のTuttiは、3-3-2のアクセントを効かせてノリ良く、
そして、その後に、まさかあのような(!)美しい中間部が続くとは
予想を裏切られるわけですね。ピアソラ、すごい!

そうそう、そのバイオリンとチェロとの掛け合いは、
都会の喧騒から離れ、キチョと奥さんが散歩している場面なのですよ、わたしには!
ちなみに背景は、一面のお花畑ですね!
低音に合うよう、Sul D(D線上)で弾いていまーす。